胃炎・胃潰瘍の原因は食べ物・細菌・ストレス

犬によく見られる胃の病気は、胃炎・胃潰瘍が挙げられます。胃炎とは胃の粘膜に起こる炎症です。原因は主に食べ物による事が多いようです。普段と同じ食事を定量で食べている場合に起こるのは稀で、おおよその場合は化学物質や異物を食べていると思われます。
また、食べ物以外の原因としての代表は細菌があげられます。胃まで細菌が侵入している場合は他の臓器や気管などへの感染も考えられます。
トリマーは大好きな犬のカットをしているのでストレスはそれほど溜まらない仕事といえますが、人間はストレスで胃炎になる事が多いですね。犬も希にそれが原因と思われる胃炎を発症します。引越しなどで家や散歩コースが変わった時にストレスを感じる事が多いので気をつけましょう。
胃炎は胃の粘膜の炎症ですが、さらに進んで傷ができて潰瘍になってしまうと胃潰瘍という症状になります。胃潰瘍は胃炎よりも深刻で、下痢や嘔吐を繰り返します。

胃酸の分泌を抑える薬が有効

胃炎や胃潰瘍では胃酸の分泌に異常が起こっているので、その胃酸を抑制させる薬を投与する事になります。また、胃酸の酸性度を抑えるための制酸薬を使う事もあります。
これらの薬はH2ブロッカーといってヒスタミンを制御して酸の分泌を食い止めます。酸のブロッカーという意味ですね。
胃酸の酸性度を低下させるための薬でプロトンポンプ阻害薬というのもあります。H2ブロッカーでは効かない場合にこちらを使用する事があります。

小腸・大腸の病気と薬

胃の炎症と同様な症状が見られるものに腸の病気があります。腸には小腸・大腸がありますね。どちらの腸にも粘膜があり、炎症が起こるとそれぞれ小腸炎・大腸炎という風に呼ばれます。まとめて腸炎と呼ぶ事もあります。原因はやはり食べた物もしくは細菌や寄生虫、もしくはウイルスなどです。どちらも下痢が主な症状ですが、大腸炎の場合は便秘が見られる事もあります。

腸の細胞のバランスを整える薬

胃腸炎で使用される薬と腸炎の場合は若干違うのが一般的です。腸の粘膜は細胞の分泌と吸収のバランスがきちんと取れていると大丈夫なのですが、崩れると炎症を起こす原因となります。ですので、腸炎とわかった場合に処方される薬はそれらを正常に戻す作用が期待されます。
麻薬であるモルヒネの持つ効果に近い性質を持っているロペラミドという薬は、モルヒネと同様に腸の水分の分泌を抑える力があります。こちらは麻薬ではなく、合法な薬として作られたものです。
カットが本業のトリマーですが、胃の薬と腸の薬が若干作用が違う事は知っておきましょう。

胃の粘膜や腸管をガードする薬

腸の薬としてはこの他に、腸管の分泌などに働きかけて下痢を止める生薬(しょうやく)、荒れた粘膜の上に膜をつくって腸を保護する収れん薬があります。
腸管に細菌などの有害物質があると見られた場合は、その物質に吸着して治癒させる吸着薬もあります。

ミニチュアダックスフンドの胃を活発にする薬

胃や腸に炎症が起こると、当然ながらそれぞれの本来のはたらきができなくなってしまいます。胃薬や腸の薬には、これらの活動を改善させる事によって症状和らげようとするタイプのものがあります。また、炎症が起こっている際には消化液の分泌も異常になっているので、それを助けるための薬もあります。
犬の薬の事に詳しくなっておく事はトリマーとしてのスキルのオプションのようなものですが、自分のためにも役立ちます。ただなんとなく薬を処方するのではなく、胃や腸がどのような状態になっていて、何を改善させようとする薬であるかを知っておく事は大切です。

脳幹から刺激して胃の働きを良くする抗ドパミン薬

胃や腸の消化を助けるというと、それぞれに直接何かをはたらきかけると思いがちですが、実は脳幹や神経を刺激させます。手足の運動でもそうですが、内臓の運動の動きにも脳は大きく関係しています。
ドパミンという物質は、普段から胃の運動を抑えています。胃が正常な時は何も刺激しなくて良いのですが、活発に運動して欲しい時にはこの物質のはたらきをわざと抑制させます。その薬を抗ドパミン薬といいます。
胃炎になっているミニチュアダックスフンドが何度も嘔吐するようなら、抗ドパミン薬は有効です。胃の働きが良くなると血流もスムーズになり、嘔吐も抑制できるからです。

慢性の胃炎なら漢方も

また、刺激が少ない漢方薬でも胃の働きを助ける事ができます。消化液の分泌を助けるゲンチアナやセンブリなどの成分を含んだ胃薬がその代表です。慢性的な胃炎で悩んでいる犬にはこちらが良いかもしれません。獣医師とよく相談してみましょう。

胃や腸に与える薬のいろいろ

胃炎や腸炎などの場合、その原因によって与える薬も若干変わってきますが、もし細菌による感染が原因であればペニシリン製剤などの抗生物質や合成抗菌薬のサルファ剤が有効です。このような薬以外にも、もっと強力な抗生物質を使用する事もあります。いずれにせよ、獣医師の判断に任せるしかないでしょう。

比較的穏やかな効き目の生菌剤

細菌が原因でない場合で、症状が軽い場合には、生菌剤で腸を整える方法を取る事も有効です。人間を含めて動物の腸にはもともと必要な細菌がたくさん住んでいます。よく聞くビフィズス菌や乳酸菌がその代表例です。
人間も犬も大腸にすごい量の細菌がおり、腸のはたらきを助けています。しかしそれらの必要な細菌が足りなくなると下痢になったりする事があります。そこで、細菌を外から腸に入れてはたらきを促進させるのが生菌剤です。即効性はありませんが安全性が高いのでよく用いられています。

吐き気には脳にはたらく制吐薬

嘔吐だけに絞った薬を制吐薬といいます。胃炎や腸炎になると多くの場合は吐き気も伴うので、このタイプの薬を使用されることが多いと思いようです。
吐き気は胃からきているというイメージがあると思いますが、制吐薬は脳にはたらきかけます。脳には嘔吐中枢というのがあり、「吐け」と命令する事によって吐き気が起こります。この命令を制しさせるのが制吐薬です。
犬のカットにも病気にも関係ありませんが、車酔いしやすい犬や人というのは、この嘔吐中枢のはたらきと関係がありそうですね。