飼い犬に家で薬を与えるとき
家で薬を与える時は、その時に教わった方法や回数、与えるタイミングなどをしっかりと守る必要があります。なぜなら、口から入った薬は、飲むタイミングやその内容によって血液を循環し始めるスピードや排出の時間が変わってくるからです。
治療域が保たれるように服用する
飲み薬は、飲んでから体の中を通って血液中に入るまではある程度の時間がかかります。しかも、血液中を循環しはじめてもすぐに効力を発揮する訳でもありません。ある程度の量が血液中を巡って濃度が高くなるとようやく効果が現れます。この値を「閾値」と呼んでいます。
閾値を超えると効果が現れ始め、一定の濃度までは薬の作用が有効に働きます。しかし濃すぎると副作用が見られるようになり、これを「毒性域」と呼びます。その毒性域と閾値の間を「治療域」と呼びますが、薬の濃度はこの範囲で保っておく事が重要となります。
従って、飲み忘れたから2倍与えたりしてしまうと、「効果がない状態」から「毒性域」に急に濃度が上がる事になり、薬が効かないどころか悪影響になるので気をつけましょう。
やりすぎると乾燥するシャンプーと同じ
カットやシャンプーが仕事のトリマーの身近なところで言うと、シャンプーやトリートメントの効果も同じことがいえますね。シャンプーを2回行った所で効果が2倍になる訳ではありません。
また、やりすぎると乾燥の原因となり肌に悪影響です。ある程度の清潔度と油脂を含んだ肌がいちばん犬にとって良いという事と薬の作用は同じといえます。
犬に注射をする効果
犬への薬の与え方は人間と同じように3種類で、口から与える・皮膚などに塗る・注射をする、といったものです。その中でも注射は、血液中に直接入れるので、他と比べて圧倒的に即効性があり、胃や肝臓などを介さないのでストレートに効果を発揮します。
しかし薬の効果が期待できる反面、その薬のよる副作用のリスクも高くなるので慎重に行う必要があります。
緊急の薬などを即効で効かせたい場合に有効
緊急の治療の場合で薬を投与する際にはこの注射投与が用いられます。その病気によって注射する場所が異なるので、飼い主が自分でやることはできません。さらに注射前には消毒もしなければならないので、手軽に行うことはできません。カットだけでなく病気にも詳しいトリマーさんでも、お客様のワンちゃんに注射をすることはできませんね。
糖尿病を患うと飼い主自身で注射する事も
家で行う事が必要な注射もあります。人間でもそうですが、糖尿病を患っていると、定期的にインスリンを血液中に与えないと糖分が不足してしまいます。この場合は、飼い主が獣医師から入念な指導をしてもらって自分で行う事になります。
最初はかなり手こずるので、事前にどの程度体に触られるのに慣れているかがポイントになります。子犬の頃から体をたっぷり触ってスキンシップを強くしていれば慣れてくれるのも早くなりますが、どんな犬でも最初は上手くいかない事が多いようです。
与える薬の副作用も知っておこう
薬の副作用という言葉をよく耳にしますが、本来なら病気を治すための薬が何故体に悪い作用を与えてしまうのでしょうか。トリマーとしても、トリミングサロンにカットにきたワンちゃんの飼い主のお子様などに聞かれたら何と答えるでしょうか?簡単そうで意外と答えられない質問ですね。
薬はそもそも体が必要としない異物
そもそも薬は食べものなどとは違い、体に本来入ることがない「異物」といえます。その異物は、病気の原因となっている細菌などを殺す事ができるのですが、もともと体にとっては不自然な成分なので、量が多すぎると体が拒否反応を示したり、元気だった臓器に悪影響を与えたりします。
薬の量を注意しても副作用が出てしまう場合は、その薬を飲んだ犬が薬を吸収しやすい体だったり、その成分に対して過剰に反応してしまうという事が考えられます。薬を飲んで何か異常を感じた場合はただちに使用を中止して動物病院でその原因を突き止めるようにしましょう。
与えすぎると血液中の濃度が増える
量を注意していても出てしまう副作用なので、量を与えすぎた場合にはかなりの確率で出てしまいます。これは、血液中に入る薬の濃度が濃すぎるためにおこるためで、副作用というよりは毒作用と言えます。薬の多くは大量に飲むと危険なのは、このような理由によります。