犬の心臓の薬を知っておこう

素人では手を出してはいけない分野ですが、獣医師の話が理解できるようになるために、また、余計な薬をもらわないためにも心臓の薬の事も知っておきましょう。また、カットなどをしているトリマーであれば、犬の心臓の薬について詳しくなっておくと何かと役に立ちます。

比較的逞しい犬の心臓

犬の心臓病にもいろいろな種類があり、それぞれ症状も異なりますが、心臓の働きが悪くなるのを一括して心不全と呼んでいます。心臓の働きの低下も段階に分かれており、最初の段階では外見からは心臓の異常が読み取れない程度の軽いものです。
心臓はいちばん重要な臓器であるためか、多少悪くなっても正常に働こうとする力が強いのが特徴です。そのため、心室や心房にちょっとした異常が起こってもなかなか気づきません。

第2段階に入ったら危険

時々息切れが見られるようになったら2段階目に入っている可能性が高くなります。多くの場合はこの時点で異常に気がつくのでここで心臓の薬を処方される事が多いでしょう。症状が高くなるとそれなりに強い薬が必要となるので副作用の心配も高くなります。
心臓病で使われる薬は、心臓に直結する心筋の収縮力を高めるもの、心筋の興奮を収めるもの、血圧を下げるものなどがあります。
強心薬はとても強い薬なのでかなり慎重に処方する必要があります。効果としては、親近を収縮させる力を強くして心拍数を抑える効果と、刺激の伝導を抑制させるものです。

この他、ベータ刺激薬というのがあり、これは重症の場合に注射で使用するので家庭では使用しません。その他、最新の心臓病の薬も多数出ていますが、実用になっていなかったり高価すぎたりするものもあります。書籍に詳しく載っているので一度見てみてはいかがでしょうか。

血圧を下げて血管を広げる

犬に有効な心臓の薬は強心薬の他に血圧を下げて血管を広げる薬がありますが、血圧を下げる薬にはたくさんの種類があります。
動物の体内の血圧を収縮させているのはアンギオテンシン2という物質ですが、この物質がはたらきすぎると血圧が上がってしまいます。そこで、この物質の生成を抑えて血圧を下げて血管を広げる薬があります。

血圧を下げるための成分が入った薬

その血圧を下げるための薬は、蛇の毒がヒントになっています。この蛇の毒には、噛み付いた相手の血圧を下げる成分が入っているので、血圧が上がりすぎた場合に有効になります。
アンギオテンシン2という成分は体に不可欠な成分なのですが、血圧が上昇した場合には抑えなければいけなくなるという面も持っています。血圧が高い状態でアンギオテンシン2が生成されていくと、心臓肥大や動脈硬化の原因にもなります。

体のはたらきを抑えるという薬の役目

心臓の病気を総称して心不全といいますが、多くの場合は血圧の上昇が伴っているので、この血圧を下げる薬がよく使用されています。体内で生成される必要な成分が逆に危険になってその生成を抑えるというのはちょっと不思議な感じがしますね。
犬もまた、人間も心臓のしくみは同じです。カットやトリミングには関係ない話なのでトリマーの方には関係ないかもしれませんが、「血圧が上がる=血管が収縮する」という関係は、自分や家族のためにも覚えておきましょう。

心臓のはたらきを改善させる利尿薬

利尿薬とはどのような薬かご存知でしょうか。尿を多く出させるという事は想像がつきますが、その細かな効果までは多くの方は興味がないし知る必要もないので知らないではないでしょうか。
犬のカットの事なら何でもお任せのトリマーですが、犬の体の事にも詳しくなっておきたいものです。また、犬の体を助けるための薬についても少し知っておきましょう。

心臓病で使用する利尿薬は血液の量を抑えるため

犬の利尿薬は「尿の量を増やす」ものですが、心臓病の場合の使用目的は、尿を増やす事ではなく、血液の量を減らす事にあります。とくに心不全の治療として使用される利尿薬はよく使われている治療手段です。
心不全には血液に注射する強心薬や血管を広げて血圧を下げる血管拡張薬などがありますが、多くの場合は危険も伴います。ですので、直ちに命に危険がないと判断された場合は利尿薬などの「軽い」治療から始めるのが一般的です。

カリウムなどの栄養が不足するため獣医師の管理が必要

腎臓に入った水分は、そこから尿や栄養分に分かれて行きますが、ここで栄養分にいくはずの水分を尿に回すのが利尿薬です。尿が増える事によって血液の量が抑制できるので、少しずつ血圧を抑えていく事ができ、心臓への負担も徐々に軽くなっていきます。
ただやはり栄養分が尿となるわけなので、使い続けると細胞に悪影響を及ぼしていきます。このため、自宅で使用するのは危険が伴うのでおすすめできません。必ず獣医師の管理のもとで行うようにしましょう。もしカットのお客様が利尿剤を定期的に使ってるんだよね、なんて話をされたとしたら、動物病院で管理してもらう事を是非おすすめしてください。