心臓は血管の親分的役割

犬の体には血管が張り巡らされています。体のどの部分をカットしてもすぐに血がでるのは、体の至る箇所に血管があるからです。そしてその血管の中心といえるのが心臓です。
ポンプの役割を果たしていると言われる心臓は、体に酸素を行き渡らせるために、肺を通して血液を体中に送り込みます。心臓から送り出された綺麗な血液は、体のいろいろな部分で栄養やホルモンなどを作り出す元として運び込まれた後、二酸化炭素や老廃物を排出するために心臓へとまた循環していきます。

部分的に色々な仕事をしている心臓

ポメラニアンの心臓は、人間と同じように2つの心房と心室からできており、それぞれがそれぞれが役目を果たしながら血液を流れ込ませたり肺に送ったりしています。
例えば、左心房は、心臓から肺に送られて浄化された血液を受け取り、収縮力の強い左心室に送り込んで全身に流すといった感じです。
心臓のしくみや流れをカットが仕事のトリマーやトリミングサロンのスタッフが知っておく必要はないかもしれませんが、大好きな犬の体について知っておいても損はありませんね。

心臓をフィラリアから守ろう

犬は心臓に関する病気が多い動物です。普段から犬をカットしているトリマーであれば飼い主さんと話していて心臓病になった犬の話をした事がある人も多いでしょう。
心臓病というとかなり重症なイメージがありますが、皆が知っている「フィラリア症」も一種の心臓病です。

心臓に住みつくフィラリア

フィラリアをウイルスと勘違いしている方もいらっしゃいますが、これは小さな「虫」の名前で、蚊を媒介役として体に入り込みます。「蚊に刺されて入ってくるなら防ぎようがないじゃないか」と思う方もいると思いますが、確かにその通りです。
では、毎年蚊が出る季節の前に行うフィラリア予防はどのような意味があるのでしょうか。これは、「体内に入ったフィラリアを駆除する」という役目を果たしています。体内にフィラリアを入れないのではなく、入ってしまったフィラリアを血液中に入れない、といったものです。
ですが、すでに体にフィラリアが入っていて血液中を巡っている場合は予防薬に効果はないとされています。その場合には、体内のフィラリアを駆除してから予防を行う流れになるのが一般的です。

予防する事が唯一無二の対抗手段

毎年接種する事が推奨されている混合ワクチンの対象となっている伝染病と同様で、フィラリア症の場合も、ポメラニアンが感染するとやっかいなものの予防方法が確立されている病気です。感染してしまえば重症になりますが、きちんと予防をすると感染する可能性はかなり低くなります。
カットにきたお客様がもしフィラリア症を甘く見ていて予防をしていないといった場合は、なぜ予防しなければならないかを優しく説明してあげましょう。有効な治療薬がないものの予防する事ができる病気だという事を覚えておいてください。

ポメラニアンの心臓と呼吸の関係

血液を体に流して栄養や酸素を送り込む心臓は、他の臓器などの影響ではたらきが悪くなったりする事があります。なかでも、血液の量に異常があると心臓にも負担がかかる、といったように血管は心臓と直接繋がっているのが原因で不具合が連動する事があります。もちろん、逆のパターンもあります。
逆のパターンをトリミングサロンに例えると、店長が心臓で、急病などで休んだ場合に他のトリマーに負担がかかって全てのお客様のワンちゃんをカットできなくなる、といったところでしょうか。

心臓のはたらきが悪いときの症状「心不全」

心臓が正常に機能しなくなる病気を一概に「心不全」と言ったりします。よく原因は心不全、と言ったりしますが、これは「原因はよくわからないけど心臓が機能しなくなった」というのも含まれています。つまり、病名というより症状をさす言葉といえますね。
心不全というだけでは治療方法は確立しません。したがって獣医師が「心不全」と言った場合は、「原因は何ですか」と聞くようにしましょう。あくまでも心不全としか言わない場合は原因がわからないのかもしれません。

興奮させないように注意する

動物病院では多くの場合心電図やX線の検査を行う事になります。それで原因が分かればその病気に対応した治療法をとりますが、それでもはっきりしないと、とりあえず心臓に負担をかけないための薬と生活に頼るしかないようです。
心臓に悪いのは塩分の多い食事と激しい運動です。驚いたり興奮するのも心臓には良くありません。心臓病の子を扱うトリマーさんは、興奮させないようにゆっくり落ち着いてカットをするようにしましょう。

それぞれのはたらきがあるポメラニアンの心臓

心臓の機能に障害がおきてしまう事を全般的に心不全と呼びますが、心不全の診断をしていると僧帽弁という心臓の中にある弁が閉じなくなって機能障害になっているのが分かる時があります。
心臓は心房・心室に分かれています。弁によってそれらの部屋が区別され、役割も違っています。この弁の大きさが変わったりすると、それぞれのはたらきができなくなって心不全の原因となります。

小型犬に多い僧帽弁の変形

ポメラニアンのような小型犬では、僧帽弁の大きさに異常ができて閉じなくなる事が見られる事があります。症状としては軽い咳が初期症状で、悪化してくると回数が増えていきます。渇いた感じの咳をするようなら注意が必要です。もしカットのお客様のポメラニアンが何度も渇いた咳をするようなら、飼い主様に念のため動物病院に行った方がいいと教えてあげましょう。
咳だけの場合は油断しがちですが、さらに悪くなると呼吸困難や貧血になってしまう事もあります。悪くなる前に診断してもらう事が重要です。

負担を軽くして悪化を防ぐ

心臓の細かな部分の病気なので、原因が分かっても治療は困難とされています。しかし、症状を軽くするための薬はあるので、それを飲み続けると悪化は防げるようです。
また、心臓に負担を与えないように塩分を控え、ドッグランなどの激しい運動は控えた方が良いでしょう。朝と夜の散歩も少し時間を短くし、心臓への負担を減らすようにしましょう。
獣医師は心臓病の犬を多く診ているはずなので、そのなかでも快適に生活ができる方法を教えてくれるでしょう。

心房と心室の壁の穴

心臓には2つの心房と心室がありますが、心房同士は壁で隔たれています。しかしポメラニアンが生まれた当初にはその壁に小さな穴が空いていて、成長と同時に閉じていくのが正常です。が、希に成長しても穴が閉じないで空いたままになる事があります。

生まれた時は開いている心房を分ける壁

心房の壁の穴が塞がらないまま成長してもはっきりした症状や体力の変化は確認されていませんが、隔たりがないために片方にフィラリアが寄生すると両方に及ぶという危険が伴います。
ただでさえ心臓にフィラリアが住みつくと良くないので、この症状を発見されたポメラニアンの飼い主はなお一層フィラリア予防を怠らないように注意しなければなりません。
普段からカットのお客様にフィラリア予防について教えているトリマーさんも、心臓病の怖さを付け加えてあげるとなお一層良いかもしれません。トリミングサロンで働いている人や犬関連の仕事をしている人には知っておいて欲しい知識です。

遺伝によってみられる心室の壁の穴

2つに分かれている心室の間に穴が開いている事もあります。これは生まれつき閉じているのが正常なので、はっきりと病気といえる事ができます。
症状がはっきり出ない場合もありますが、穴が大きくなると発育に問題が生じる事が多いようです。ペットショップで売っている子犬時代に発見するのは不可能なので、飼い主としては泣き寝入りして育てていくしかありません。
ただ、親が同じような心臓の障害を持っている場合は子に遺伝される事が多いと確認されています。ポメラニアンを選ぶ際に心臓に病気があった親の子は選ばない方が良いでしょう。

心臓から出ている動脈

心臓と肺を繋いでいる動脈には大動脈と呼ばれる部分と肺動脈と呼ばれる部分があり、生まれる前にはそれらを動脈管という管が繋げています。そしてお母さんのお腹から出るとその動脈管は閉じて大動脈と肺動脈は分かれてそれぞれの働きをするのが一般的です。
しかし、生まれてもその管が閉じずに繋がった状態になったままになる事があります。

発見できるのは希な動脈管の開放

原因の多くは先天的の異常です。また、かなり大掛かりな検査をしないと発見できない心臓の異常なので、生まれてすぐにはまず発見できません。
動脈管が繋がったままでいると、本来行くはずでない血液が大動脈から肺動脈に流れてしまって心臓に負担がかかる事になり、呼吸困難や食欲の不振だけでなく色々な心臓病の原因となってしまいます。
診断は、聴診や心電図・超音波検査などを駆使して行いますが、この病気をはじめから疑って発見するというより、原因がわからなかったり他の心臓病を疑って偶然発見される事が多いようです。
トリマーには普段無縁の話ですが、看護師をしながら犬のカットをしていた兼任トリマーであれば一度は見た事があるかもしれませんね。

症状によっては手術をする事も

症状の程度によって治療方法が変わるのが特徴です。軽い場合は特に不自由がないまま年齢を重ねていく事もあります。ただ、老犬になってから症状が出る事もあります。急に疲れやすくなったり運動量が落ちた時は疑っても良いかもしれません。
動脈管が開いているのが発見できて、症状もかなり重い場合には手術をする事もあるようです。ただし、心臓の細部にあたるのでかなり技術が必要で、すべての獣医師ができるかどうかは分かりません。
カットが仕事のトリマーとしても、犬の知識を深めるために、獣医師と話す機会があれば心臓病の手術の事を聞いてはいかがでしょうか。