日本政策金融公庫から低金利で高額のお金を融資するには、少なくとも創業計画書が必要になります。公庫に行くと担当者と面談する事になりますが、その際にこの創業計画書に記入した事に沿って話を進めていくことになります。

2度と変更しないつもりで記入しよう

記入した事項は、基本的に変更はできません。仮に変更を申し込むと「ぶれている」とも取られかねないし、計画性のない人だと思われる事もあるので、どちらにしてもその創業計画書で決定と考えておきましょう。
また、記入できるところは全て書き込みましょう。少しでも多くの情報を伝えた方が有利です。カットが得意でお客様に喜んでもらっているといった類の事も伝えたいところです。

夢を表現するためのスペース

最初に登場する「創業の動機」欄は、とても狭い割に重要なスペースです。昔から考えていた夢や情熱をこのわずかなスペースで伝えなければなりません。
これだけでは足りないのが当然なので、別紙を用意して印刷しておくか、事前に何を言うか頭で整理しておくといいでしょう。
逆に、「こんなに書くスペースいらない。余ってしまう」場合はちょっと問題です。当日の面談で話すネタにも困るかもしれません。

夢を整理してアウトプットできない場合は、まだ自分の開業のカタチが整っていない事が考えられます。もうちょっと開業を伸ばした方がいいかもしれませんね。

事業の経験等では関連性をアピール

創業の動機の下には「事業の経験」を書く欄があります。ここでは、トリミングサロンの店名や勤続年数を記入します。
この欄もとても狭いので、それぞれのお店でどのような経験をしたか、何かアピールできる事があれば別紙にでも記入しておきましょう。
トリミングサロンを開業するのですから、関連のあるトリマーをやった経験が武器になります。しかし、その他の職種でも関連付けは可能なので、自信をもって書き込みましょう。

資格に自信がある人は存分にアピールしよう

同じ欄に、取得している資格を書く欄もあります。トリマーの場合の多くはJKC公認トリマーを持っているかと思いますが、A級であればその難易度や活躍しているA級トリマーなどを例に挙げ、どれ位の信用を得ているかをアピールするといいでしょう。

そうでない人は補える何かを用意しよう

取得資格に自信がない場合は、その他にアピールできる事をたくさん用意しておけば大丈夫です。融資の担当者にもよりますが、大事なのは資格の内容ではなくアイデアや情熱です。
カットの経験やお客様の多さを存分にアピールすれば、資格の不足は補えるかもしれません。
しかし、口で言ってもほとんどの人は信用してくれないので、データ化する必要があります。自分を指名してくれたお客様のリストなどを作っておくといいでしょう。

取扱商品とサービスは計画を記入する欄

創業計画書の3番目に出てくるのは、そのお店の商品や行うサービスなどについて記入する欄です。3種類の内容を書く場所があり、それぞれのシェアを振り分けてパーセントで記入します。
まだ商売を始めていないので、ここでは将来の予定や目標を記入する事になります。グッズやフードの販売をするのであればそれも記入しましょう。

働いている店のオーナーに聞いてみよう

現在トリミングサロンで働いている人であれば、そのお店のオーナーにある程度聞くと大体の金額が予想できますね。リアルな金額を聞くのは難しいかもしれませんが、割合であれば教えてくれるのではないでしょうか。
もし生体を販売しているお店で働いていて自分はカットの専門店を出す場合でも、計算は可能です。その場合は、生体を抜いた売上とトリミングの売上で計算します。

トリマーの数を考えて置き換える

融資担当者に具体的な根拠として認めてもらうには、犬種毎のトリミング料金をあらかじめ決めておくのがいいでしょう。
現在勤めているお店の犬種毎の売上を教えてもらい、自分の店に置き換えます。今のお店のトリマーが3人で開業するサロンのトリマーが2人なら単純に3分の2で計算すればいいわけです。
この場合も、どんな質問にも答えられるように、根拠を考えておきましょう。

手を抜かずにアピールしたい「セールスポイント」

創業計画書の中の「セールスポイント」は、最初の「動機」同様にしっかりと考えをまとめて記入したい欄のひとつです。ここでは、自分が考えたコンセプトを前面に出して、他の店との差別化をアピールしましょう。
ただし、セールスポイントという文面にこだわって、ターゲットを忘れないようにしましょう。実際にカットのお客様に来てもらえるようにイメージしなくてはなりません。

リアルなデータを使用してアピールすると効果的

他店との違いをアピールする事が重要です。例えば、カラーが得意でカラーだけを求めてやってくるお客様がいた、新しいカットスタイルを考案するのが得意だ、などです。
ここでは文章だけで説得力があまり足りないので、実際のデータを用意するといいでしょう。カラーのお客様が何人いて、自分を指名している人が何パーセントいた、といった具合です。

証拠写真も活用してみよう

実績をアピールするのも大事ですが、これから行う事がどれだけ現実味があるかを出すために、面白いメニューを色々考えておいても面白いかもしれません。
大事なのは、「自分だから出来る」のをアピールする事です。少しでも融資担当者に「この人ならできそうだな」と思わせるためにできる事を色々考案しましょう。
カット写真や喜んでいるお客様の写真などを用意しておくといいかもしれませんね。

しっかりと決めておきたい取引先と従業員数

セールスポイントの下には、取引先と取引条件、シェアや売掛・買掛の比率、回収と支払いの期日などを記入する欄があります。
さらにその下には、雇う予定の従業員数とその雇用形態、支払い締日と支払日、ボーナスの支払い予定なども書く欄が設けられています。

仕入れ先は正確にと伝えよう

トリミングサロンのお客様はカットに来るトイプードルちゃんやヨーキーちゃんなどのワンコ達なので、販売先は「来店客」という事になります。
仕入れ先は、グッズ販売や生体販売をする場合にはしっかりと決めておく必要が出てきます。商品をある程度絞る事によって仕入れ先も決める事ができるでしょう。

仕入れ先が流動的になりそうな場合は、その旨を融資担当者に伝えなければなりません。その理由もしっかりと伝わるように別紙にまとめておくといいでしょう。

事前に計画を練って従業員数を決めておこう

従業員を書く欄がありますが、ここはスペースが狭い物の重要な事項ですね。事前に決めた収支計画に従って記入しましょう。
何人のトリマーを雇うのか、正社員なのかパートなのか、賞与を出すのか否かなどを決めておくとすぐに記入する事ができます。

創業計画書に記入するトリミングサロンの設備資金

創業計画書の2枚目(A4で印刷した場合は右側)には、設備資金・運転資金・自己資金・親兄弟や親戚又は友人からの借入額・日本政策金融公庫からの借り入れ希望額・他の金融機関からの借入見込み額を書く欄があります。
公庫に融資を申し込む場合は「借入申込書」に合計額を記載するので、その合計額と創業計画書の公庫からの借入欄が同じになるようにします。

科目はおおまかに考えても大丈夫

資金がどの程度必要かを具体的考えた際に、「トリミングテーブル×2=○万円」など、細かな計算をしていますね。ここではそれらを簿記の科目風に書きます。
簿記と言ってもここでは決まりはないので難しく考える事はありません。トリミングテーブルであれば「備品」と考えても大丈夫です。マイクロバブルバスであれば「機械」といった感じです。

開店当初に必要な設備やグッズに要する資金

資金は、設備資金と運転資金に分けて記入します。設備資金は上記のような「最初に必要なもの」です。お店の改装費もそれにあたります。
その他、お店を飾る雑貨やトイプードルなどの犬の洋服や首輪、リード、ハーネスなどのグッズ、おもちゃ、こだわりのフードなどもこちらになります。
ここに記入する際、実際に業者から見積もりをもらっていると好印象です。

トリミングサロンを開業した後に必要な「運転資金」記入欄

機材やグッズを揃え、お店の初期費用や改装費などを計算したら、今度は「運転資金」を計算します。運転資金とは、お店を無事オープンしてから6ヶ月位までの費用と考えて良いでしょう。
広告宣伝がうまくいって開店当初からお客様がたくさん来店すれば問題はありませんが、思ったようにいかない事が多いのが現状です。

売上が立たない場合の事も考える

融資を申し込む際は、トイプードルのお客様が何人いて、ヨークシャテリアやアメリカンコッカーなどのお客様が…などを皮算用で計算してアピールします。
当然強気の方が融資が通りやすいのですが、100パーセント確実なものではありませんので、上手くいかなかった場合に支払う従業員への給与、建物の賃貸料、水道光熱費もキープしておかなければいけません。
また、思ったよりお客様が来なかった場合に新たな広告宣伝をする必要も出るかもしれません。ですが手元にお金がなかったらどうする事もできませんね。

安心してトリマーが仕事できるお店にしよう

ただ、トリミングサロンは仕入れをほとんど必要としないので、物を仕入れてお客様に売るタイプの商売に比べると運転資金は比較的安く済みます。
仕入れが必要ない分、従業員の支払いへの補填として運転資金を借りる金額をしっかりと叩き出しておきましょう。
言い換えれば、トリミングサロンの商品はトイプードルなどを綺麗にカットするトリマーのサービス・技術・接客です。スタッフが安心して働ける職場をつくるのが成功のカギになるでしょう。

トリミングサロン売上高の予想を記入する「事業の見通し」

融資を受ける際に記入する創業計画書の中で、とても重要な売上の見通し・予想記入欄です。経験が豊富で動機がしっかりしていてサービスに自信があっても、売り上げの見通しが立たなくては融資をしてくれません。

仕入が少ないトリミングサロンは計算が楽

トリミングサロンは、トイプードルのカットコースは6,000円でマルチーズのシャンプーコースは4,000円、チワワのアロマコースは5,000円などコースによって金額が決まっていて、来客数もある程度予想がしやすいのが特徴なので計算は易しいと言えます。
仕入れが必要な商売であれば、仕入れにどれ位のお金をつぎ込んで、場合によっては加工もし、その上で人件費や経費も差し引かなければなりませんが、美容の場合は面倒な「仕入れ」がほとんどないのが楽といえますね。

まずは収支計画書をつくろう

記入欄は「創業当初」と「軌道に乗った後」に分かれています。軌道に乗る予想はひとそれぞれなので、自分で考える事ができますが、融資担当者を納得させるためのものなので、常識的な範囲にしましょう。

この欄を記入してしっかりと説明するには、収支計画書を作成する必要があります。
トイプードルの客が何人いてペットホテルの利用客が月に何人いて…など、オリジナルのもので大丈夫ですが、これも担当者にアピールできるものでなければなりません。
収支計画書を作成したら、第三者に確認してもらって客観的に融資ができそうかどうかを判断してもらう事をお勧めします。

創業計画書と同時に見せたいその他の計画書

創業計画書の一番下の欄には、他に参考となる書類があったら同時に提出してくださいといった旨の記載があります。
これは一般的には「事業計画書」および「収支計画書」の事と言われています。また、「あったら出してください」というニュアンスで書かれていますが、融資ができるかどうか微妙な場合は絶対に必要といっても過言ではありません。

アピールするための必須アイテム「事業計画書」

事業計画書については後述しますのでここでは簡単に触れておきますが、形式は自由で、オリジナルのものを作る事が可能です。
書店にいくと多くの事業計画書に関する書籍が並んでいますので、参考にすると良いでしょう。
基本的には、開業を決めた段階で行った「トリミングサロンの場所を選んだ理由」「コンセプトの決定」「カットにおけるオリジナル性とそれを生かす方法」などがメインになります。

計画性をアピールする「収支計画書」

収支計画書は、創業計画書の「必要な資金の調達方法」の設備資金・運転資金欄に書き込む内容を更に細かく具体的にしたものになります。
トリミングサロンの場合は、大まかに「資金をどのように使うか」「返済はどのように、何回に分けて行うか」「顧客の数は何人か」「認知した媒体別の顧客数」「リピーターの数」「広告宣伝費の内訳(ホームページ・チラシ・ティッシュそれぞれの額など)」といった感じになります。